まちなか+ONE月間 プロジェクト
土井 章平さん(左)
(社会福祉法人愛火の会 野々島学園 理事)
安田 征司さん(中)
(新市街商店街振興組合 青年部)
矢上智世子さん(右)
(アート系クラフトの小さなお店UMU 運営)
Q1. 今回のプロジェクトを行うことになったきっかけは何ですか?
安田:以前から商店街関係者で「やさしい街づくり」について話し合いを重ねていましたが、なかなか全体の取り組みとして実行に移すことができていませんでした。しかし、今回、くまもと・まち魅力向上協議会において、「ひとそだて、ことおこし、とこづくり」(※)の3つの分野で実働していくことが決まりました。その中で、老若男女問わず、障がいの有無に関わらず、誰もが安心してまちなかに来ることができる「とこづくり」を目指そうと考えたのが、まちなか+ONEプロジェクトのきっかけです。
※「ひとそだて」…街全体として伝えたい魅力・情報の共有をすることにより、街で働くことに対する意識の向上を目指す。KUMAMOTOpicsのWEBサイト制作もその取り組みの1つ。
「ことおこし」…街中の未利用空間の活用を目指し、新たなことにチャレンジする。くまもと空中図書館「まちピチュ」もその取り組みの1つ。
Q2. まちなか+ONEのプラスワンには、どのような思いが込められていますか?
土井:何らかの障がいがあることで街に来ることが容易ではないと思っている方々にも、街中に来て、お洒落をする楽しさや、美味しいものを食べる幸せを知ってもらいたいと考えています。そのために街中で働く人たちにおいても、今以上に、もう1つ考えてみよう、もう1つ取り組んでみよう、そう感じて頂きたいという思いからプラスワンという名前をつけました。
Q3.まちなかの福祉に関する現状についてどう考えていますか?
安田:ほぼ毎日、街中で車いすを利用されている方を見かけます。市電通りの段差で車いすがひっかかったり、車いすを押している人もぐらついたりする様子をみて改善したいとは考えていますが、商店街関係者としても簡単にハード面を改善できない現状にあります。今回のプロジェクトをきっかけに、来街者の方々とも理解を深め、どんどんサポートしていけるような環境になれば良いなと思います。
土井:野々島学園の施設を利用されている方の中にも、休みの日に街中に出かけてイベントを見たり、音楽を聴いたりして楽しむことが大好きな人がいます。しかし、お店に入って、コーヒーを飲んだり、お買い物をしたりすることは少し大変に感じているようです。また、車いすを利用していると、エレベーターがない建物だと気軽に入ることができません。そのような状況を改善していくには、建物の所有者やテナントの店員、福祉に携わる方々が歩み寄って話し合いを進めていく必要があると考えています。今回のプロジェクトを通して、そのような機会ができてきているので、非常に良い風が吹いていると思います。
矢上:ここのお店(UMU)を始めて感じることは、障がいのある方々がふらっと街に遊びに来た、特に目的がなく来たときに、他に行ける場所があまりないのではないかということです。気軽にお店に立ち寄って、楽しくお話をしていけるような空間があると、ただ街に行くということを目的にすることができます。そうした機会が増えることで賑わう商店街になれば良いなと考えます。
Q4. これまで実施してきた福祉をテーマとしたイベントとの違いは何ですか?
安田:以前より、様々な福祉団体から依頼を受けて商店街でイベントを行う機会はありましたが、商店街が主となって企画したり運営したりすることはありませんでした。今回は商店街で働いている方々も一緒になって考えながら実施するので、今まで以上に多くの人の理解が深まるイベントになれば良いと思います。
Q5. 今回のプロジェクトの目的は何ですか?
土井:「考えよう+ONE」については、福祉というものを身近で気軽に考えていこうとなったときに、現在、日本でも障がい者の芸術活動を支援されている、栗栖良依さんを思い浮かべました。実際に熊本で何ができるのか、福祉とともにどうやって楽しめるのか、ということを私たちと一緒に考えてもらうことで今後の活動の幅が広がっていくと思います。
安田:「感じよう+ONE」については、障がいスポーツ体験や、障がい者が手掛けた芸術作品の展示をします。ボッチャ、車いすバスケットボール、アイマスクを装着してのまちなかめぐりなど日常ではなかなか体験できない内容になっています。実際に体験してみることで、障がいのある方々にどのように手助けできるかを考えるイベントになればいいなと思います。
矢上:「楽しもう+ONE」については、最大の見どころは鹿児島からいらっしゃる、しょうぶ学園のotto&orabuのパフォーマンスです。熊本で演奏してくれるのは凄く嬉しいことですし、障がい者って実はかっこいいんです!だから、今まで障がいのある方々にあまり関心のなかった人たちにそれを知ってもらえると、とてもいいなと思います。
おとなりマルシェでは、野菜・お菓子・雑貨など、今まで障がい者の作ったものは、障がい者の作品であるという目で見られがちでしたが、今どきは全然そんな感じではないんです。だからその先入観を取っ払って、障がいの有無に関わらず、一般の商品と同じ目線で見ていただきたいです。また、今回は通常のマルシェ+αで出店しています。障がい者枠ではなくモノで勝負していきます!
Q6. 今後の方向性は?
安田:例年実施している、商店街のイベント(ゆかた祭りや銀杏祭など)にも福祉に関するブースを作るなど、活動を続けていきたいと考えています。
土井:いつか自分が足を折ったら、それだけでも障がいを感じることになります。そういったときに世の中から置き去りになっていくのを感じるかもしれません。しかし、今のうちから障がいのある人と障がいのない人とが、お互いに理解を深めておくことで将来的に助け合うことができると思います。今後もそういう機会を持てるイベントを企画することで安心して来られる街にしていきたいと考えています。
矢上:障がいと言っても、身体・精神・知的など様々です。身体に障がいのある方は、自分が何を欲しているのかを伝えてもらうことで周りの人も対応することができます。しかし、精神や知的に障がいのある方は、それをうまく伝えられなかったり、ぱっと見では障がいの有無が分かりにくかったりする場合など、お互いに接し方が分からないときがあります。そのようなことを解決していくためにも、ふだんから街に来て、少しずつ接する機会を増やして打ち解けていくことが大切になっていくと思います。
最後に…「UMU」というお店の名前の由来は何ですか?
矢上:有無を言わせないの有無です。嘘です(笑)
障害の有無に関わらず、色んなことをみんなで生み出していく、そして疑問があったら「うーむ」と言って考えようというのが名前の由来です!
取材場所
アート系クラフトの小さなお店UMU
住所:熊本市中央区南坪井町1-17
TEL:6-221-9326
営業時間:12:00〜20:00
店休日:火曜日・水曜日